エレーナ再びそれぞれの想い
「佐倉先生はこの学校に何年いますか?」
「5年よ。それと市川さんの事とどう関係があると言うの?」
なつみは教室の前の方まで行くと、教卓の上にドサッと数年前の学校のアルバムを置いた。
「じゃあ、既に学校に居た先生なら分かりますよね。
これは数年前の集合写真。これを見て何か気づきませんか?」
佐倉先生は写真を見せられても何も気づかない。
「ここに市川さんらしき人が写っています。
本来であれば、市川さんはとっくに卒業しているはず。
なぜあの人がここにいると思いますか?」
なつみは、強く佐倉先生に迫った。
アルバムを見た佐倉先生は、教室の後ろの席に座っているまなみと写真のまなみを何度も見比べ、目を丸くした。
「これは!」
佐倉先生は言葉を失った。
「先生もようやく気づかれたようですね。私が説明するわ。
市川さんは数年前に学校の寮で病死した、元我校の生徒。
つまり市川さんは、寮で出るって噂になっている幽霊よ!」
なつみから、幽霊であることを強く指摘され、まなみは、後ろの方の席で怯えるように小さくなっている。
「あっ、あの、私……」
まなみはうつむき、今にも泣きだしそうだ。
「なつみさん、どうしてこんなひどい事するんですか。
市川さんが、貴方に何か悪い事しましたか!」
シュウが立ち上がった。
「市川さんがいつまでもいるから、みんな怖がって寮が使えないんじゃない」
なつみはまなみを責めた。
シュウはまなみをかばい、すかさずなつみに反論。
「市川さんはクラスに溶け込み、友達もたくさん出来ました。
それがどうしていけないんですか?」
やがて、ふたりの激しい言い争いになった。
こうなったらもう、授業どころじゃない。
「そういうあんたこそ何よ! 私、プールの清掃で見ちゃったんだからね。 
物を宙に浮かせて移動させたり飛ばしたり。
あんたは超能力者? それとも魔法使い? それとも……」
シュウは、やばいと思った。
これ以上下手になつみと言い争えば、自分の正体もばれる。
市川まなみ問題はシュウに飛び火しかねない状況だ。
クラスメイト達は、シュウとまなみの噂をし始めた。
「物が飛ぶのは、もしかしてあの有名な現象?」
「じゃあ白川も、市川の仲間では?」
「それって白川君も幽霊ってこと?」  
もはや佐倉先生の制止など、誰も聞かない。
しばらくシュウとなつみのやり取りを聞いていたまなみは、


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