スイートスキャンダル
あたしがあまりにも必死だったからなのか、柊君がクスクスと笑い出した。


「わかりました。じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか?」


柔らかい笑みを浮かべて首を傾げた彼に、何となく悔しさが込み上げて来る。


“試合に勝って勝負に負けた”って感じがして、頷きながらも腑に落ちなかった。


「鍵はどうしますか?」


そんな気持ちを隠して、柊君を見上げながら口を開く。


「いらないわ。その代わり、ベルを鳴らしたらちゃんと開けてよね」


「わかりました」


「じゃあ、行って来る」


「ゆっくり温まって下さいね」


必要な物を纏めたあたしは、それと用意されていた浴衣を持って部屋を出た。


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