海外転勤が決まった時、父と離れられない母は私も一緒に海外へ連れていこうとした。

 しかし、場所は南アフリカ。
 父方の祖母はそれを聞いて、私を連れて行くことに反対した。

 南アフリカの治安の悪さはひどいものだ。
 まだ幼く、言葉も話せない私を連れて行くことに祖母が反対するのもわかる。

 祖母はその2ヶ月前、長年連れ添った夫、私の祖父を失ったばかりでこれ以上誰かを失うことに耐えられない精神状態だった。

 まだ幼かった私にはそういうことはわからなかったけれど、幼いながらに祖母の寂しさを感じとった私は祖母の元に残ることを希望した。

 両親と離れることは寂しかったけれど、その時好きだった特撮戦隊物のヒーローにでもなったかのように、祖母を守るのは自分しかいないのだと、妙な正義感を燃やしていたのだ。

 私は自分の机に座って、引き出しから自分の手の平より少し大きめのオルゴールを出す。


 柔らかく優しい光を放つ真珠に縁取られ、海のような青い宝石がちりばめられている。
 蓋には、まるで羽根を休めているかのような生き生きと美しい青い蝶。
 何度見てもため息が出るほど綺麗なオルゴールだった。

 そっと蓋を開けると、聞きなれた音が流れ出す。

 ベートベン「月光のソナタ」。
 私の名前、月子に合わせたのだろうか?
 

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