わたるんといっしょ
2013年8月『君の中の本音を叫べ』


(一)


春夏秋冬家にクーラーは設置されていない。


しかもか一年中コタツ布団をしまわないようなお宅は、暑さとは無縁――なわけもない。


「あっつ!風鈴の音が鬱陶しいほどにあつ!」


などと畳に寝転がるは、ちんちくりん。タンクトップ短パンの夏休み小学生に相応しい服装の男子だが。


「マスかいても汗だくなって集中できねえ暑さじゃねえかっ。なにお前、きちんと発散できてんの?悟り開いたか、クーラーつけろ、バカっ」


おませでは済ませれない小学生体型は、かき氷を持ってきた純朴少年に言ってのける。


地球温暖化死ねっ、を連呼する男子――犬童直樹に気を使って持ってきたかき氷を差し出す少年は困り顔をするしかない。


「それなら、帰られた方が……」


いいのにと、言い切る前にかき氷を掻き込む犬童。


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