私を壊して そしてキスして

少しウキウキした気分で大通りを歩いていると、突然目の前に現れたその人に、震えてしまった。


「――菜那」

「靖司……」


まるで時間が止まってしまったかのように、動くことすらできなくなる。

彼が私に近づいてきて、あとほんの少しのところで足を止める。


「探した、よ」


彼のそんな言葉に、目を見張る。

どうして? 
探す必要なんてないじゃない。

あなたが私を追い詰めた張本人なの。



何も言えない私に、手を伸ばす彼。


「少し、話がしたいんだ」


私の手首をつかんだ彼の手。
少し前まで、それが嬉しくてたまらなかったのに、今は――。




< 126 / 372 >

この作品をシェア

pagetop