バイナリー・ハート
第一話 Run

1.少年

 ロイドの姿を認めたランシュは、フワリと微笑んだ。

 その笑顔はユイが言っていた通り、あどけない少年のものだ。
 記憶にある、急速に老化が進む前のランシュの姿だ。

 言葉をなくして見つめるロイドに、ランシュは笑顔のまま口を開いた。


「お久しぶりです、ロイド=ヒューパック先生。二年ぶりですね」


 動揺を隠せないまま、ロイドはやっとの思いで言葉を絞り出す。


「おまえ……ランシュ、なのか?」
「えぇ」


 ランシュは一層目を細めて頷いた。


「ロイド、ベルの事、やっぱり知ってる人だったの?」


 ロイドがハッとして首を巡らせると、ユイが不思議そうにランシュとロイドを見つめていた。

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