大地主と大魔女の娘

魔女と感情


 魔女の娘に施す食事など無い。

 そのスープはそう訴えていた。

 怖かった。一口くちにしたとたん、思わずむせた。

 申し訳ないから堪えて飲み込んだら、胸もお腹も痛みだした。

 苦しい。


 歓迎されていないのをこうやって身をもって知るのは辛いと思う。

 身動き出来なかった。


 二口目を口に運ぶ勇気は無かった。

「お願いですから一口でも多く召し上がって下さい」

 そう泣きそうな表情で訴えられて、驚きに目を見張った。


(どうして? 私があまり食べないでいるだけで、泣きそうな顔をするの?)


 ここのお屋敷に勤めている女の人たちは、出会ったばかりの私にとても優しくしてくれる。

 いつも着替えや食事の事をあれこれと世話を焼いてくれるのだ。

 申し訳なく思っていた。

 きっと仕事を増やしているに違いないから、なるべく大人しくしていようと決めている。

 もちろん、彼女たちの意向に沿いたい。

 すっかり湯気の上がらなくなったスープを見下ろした。

 これを全部飲み干したら、彼女たちは安心してくれるだろうか。


 でも飲み干した後の体調に自信は無かった。
< 24 / 499 >

この作品をシェア

pagetop