御劔 光の風2
そう口にしたカルサは後ろ姿しか見せなかった。

僅かに見せる千羅の感情は切なさを訴えている。

その言葉にジンロも言葉を出せなくなった。

一人になりたい、そう言ったもののラファルは付いていったのだと付け足す千羅の声が低く響く。

「どこに行ったのかね。複雑な心境だろうに。」

この国はどこを見て回っても懐かしく思える、その感情がカルサにとってどんな意味を表すかは何とも言い難かった。

きっとどこかに腰を落ち着かすことはないと、ジンロの予想通りにカルサは宮殿内を足を止めずに歩き続けていた。

暖かな空気と水の音に包まれた癒しの空間は彼にとってその意味をなさない。

ひらひらと舞う鮮やかな青い化粧をした蝶がカルサの方へと寄ってきたが、その道を断つように手を払って風を起こした。

蝶は風圧によって経路を失う。

カルサは何事もなかったかのように通り過ぎてその場を後にした。

ラファルが心配そうにカルサを見上げていることにも気が付かないフリをする。

やがて与えられた部屋に戻ってきたカルサは、バルコニーが見える椅子に座って腰を落ち着かせた。


< 123 / 452 >

この作品をシェア

pagetop