「1/4の奇跡」左側の君に【完】
阿部さんが、和泉の机をコンコンと叩くと、
和泉がむっくりと顔を上げた。
「・・・なんだよ」
「和泉くんは、このクラスで一番背が高いし、
スラーッとしてモデル体型ってことで、
みんなでね。ドラキュラには和泉くんがぴったりじゃないかって。
はい、これね」
そういって阿部さんはもう一つの紙袋を和泉に渡した。
和泉は中身を覗いて、
ゆっくり引っ張り出し、それを広げてみた。
襟の立ち上がった黒いマント
黒いハット
白いシャツ
黒いベストとズボン
黒い蝶ネクタイ
「和泉くんしかいないんだよ。これを着こなせるの。
なんかさ、ほら・・
怪盗○ッドの黒バージョンみたいでしょ?」
確かに。
これを着た和泉・・かっこいいかも・・・
和泉は紙袋にぐしゃぐしゃっと戻した。
「俺。無理」
「えーーー!」
「えーーー!」
思わず阿部さんと一緒に言ってしまい、
阿部さんは少し驚いてから、くくくっと笑った。
「葉月さんはやってくれる・・よね?」
私はロリータドレスを眺めて考えた。
嫌だ・・こんなの着るの。。。
でも和泉のドラキュラは見たい。
「ちなみに、葉月さんが出てきて、客を追いかけたところで、
和泉くんが出てきて一発客を驚かせて、
マントの中にちっこい葉月さんを入れてさらっていくって形なんだけど・・
じゃあ・・他の男子にドラキュラやらせるかな・・」
和泉のマントの中に・・
「私・・・やろうかな・・・」
阿部さんは「よかったあ!」と手をたたいて喜んでいた。
「和泉くんは?やってくれない?
和泉くんがやってくれないんじゃ・・
ほかにドラキュラが似合いそうなのって誰かな・・・」
阿部さんはぐるりと教室を見回した。
「和泉・・・」
私はすがるように和泉を見た。
和泉は不機嫌そうに頬杖をついていた。
「・・んだよ。わかったよ。
やればいいんだろ、やれば」