「1/4の奇跡」左側の君に【完】
「花音、ご飯は?さめちゃうよー」
階段の下からお母さんの声がした。
「はあーい」
私は天体望遠鏡のレンズに蓋をした。
階段をゆっくり下りて、
リビングのドアを開けた。
ご飯が並べられたテーブルに座りながら、
「お父さんは?遅いの?」とお母さんに聞いた。
お母さんも向いの椅子に座った。
「お父さんはね、明日の観測会の準備で遅くなるって。
明日は、ふたご座流星群の極大だからね。
まあ。明日は帰ってこないと思うわ」
「あ・・そっか明日流星群だ・・」
お父さんいいな・・・
私のお父さんは、
うちからさらに田舎の方へ少し行った森の中にある、
小さな天文台とプラネタリウムが併設している施設の職員だ。
「それは帰ってこないね」
お母さんと笑い合って、ご飯を食べ始めた。
「そういえばね、詩織が、
お母さんって料理上手だねって言ってくれたんだ。
お弁当、いっつも凝ったの作ってくれて、
蓋を開ける時、いつも楽しみだし、
ありがとね、お母さん」
お母さんは、あははっと笑った。
「やけに今日は素直ね~。
恋しているせい?
いったいどんな子なのかしら?」