「1/4の奇跡」左側の君に【完】
和泉っていつもかったるそうにしていて、
机に顔を伏せて寝ているイメージしかなかった。
だから、こんな・・・
こんなにバスケが上手いなんて・・・
「・・・意外だ・・・」
思わず口からそんな言葉が出てしまった。
バンッ!と相手のパスをカットして、ドリブルシュート・・・
「おい!拓人ー!!女子が見ているからって、
いいとこ見せ過ぎなんだよー!」
和泉はクリッとした大きな瞳を細めて笑った。
・・・和泉ってこんな顔で笑うんだ・・・
ふわふわっと盛られた黒髪。
毛先は無造作にハネていて、
小さな顔に、よく似合っていた。
「そんなんじゃねーよ」
和泉は髪をくしゃくしゃっとかいた。
和泉って笑うと
こんなにかわいいんだ
知らなかった・・・
キーン
コーン
カーン
コーーーン
「やばっ!チャイム鳴った!」
急いで体育館から莉子と出て行こうと思ったら、
男子たちが私たちを追い抜いていった。
ドン!!
「痛っ!」
後ろから追い抜いてきた男子と、
私の肩がぶつかった。
「あ。わりぃ・・」
片手を軽く上げて走り去っていったのは、
和泉だった。
「大丈夫?花音?
花音?」
初めて和泉と目が合って、
心臓がドクンと飛び跳ねた気がした。
和泉とぶつかった自分の肩に、
痛みとは違う不思議な感触が残っていた。