白と黒の神話
第1章
 穏やかな光が回廊に溢れている。そこは平和な王国であることで知られているグローリア王城の一角にある回廊である。朝の爽やかな空気と小鳥の囀る声が穏やかな気配に色を添えている。だが、それらをかき消すような騒々しい音が、回廊に響いてきていた。


「セシリア様は?」

「こちらにはいらっしゃらないわ。どちらにいらっしゃったのかしら」


 この王宮に仕えている侍女たちだろう。お揃いのお仕着せを身につけている少女たち。彼女たちは焦ったような表情を浮かべながらあたりをみている。そんな中、回廊に立つ人影をみつけた彼女たちは、ホッとしたような様子を浮かべていた。


「セシリア様、大変でございます」


 侍女のその声にふりむいた影。栗色の髪をきちんとまとめ、榛色の瞳には理知的な光が浮かんでいる。しかし、その身にまとっているドレスに剣帯を巻き、細身の剣を佩いている姿は不思議としかいいようがない。だが、それは侍女たちには当たり前のことなのだろう。彼女たちは自分たちの発見したことを報告しなければならないという思いに駆り立てられていた。
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