モラルハザード
エピローグ

「真琴さん、真琴さん」

階段の下から呼ぶ声が聞こえる。

私は大きなお腹を抱え、どっこらしょと、斗夢の手をひいて

二階からゆっくり下りる。

「まぁ、何してはったん?あのね、真琴さん、お産は病気やないんやで。

そんなんして、子供と寝てばっかりしてはったら

お産の時にしんどい思いしはるで。なるべく、体動かしはらな」

「ええ、そうですね、お義母さん」

階段を下りるまで、早口の関西弁でしゃべる姑を今日もやり過ごす。


「おばあちゃん」

先に下に下りた斗夢が姑に抱きついた。

「ママをいじめちゃダメ」

「斗夢ちゃん、おばあちゃん、ママをいじめてないねんよ。

ママのこと思って言ってるんやよ」

さっきまでとはまったく違う声色の姑の目尻は下がっている。

「おばあちゃん、ママと公園いってくる」

「ああ、そうか、ほな気をつけていっておいでや」

孫には甘い姑は、斗夢の言うことなら何でも聞き入れる。

こうして、斗夢に助けられ、私は何とかやっている。
< 389 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop