傍にいさせて
聞いてませんけど
私が桜凛高校に転校してきてから、数週間たった6月某日、金曜日。
6月も中旬に入り、本格的に梅雨入りし始めた。
毎日ジメジメしてヤだなぁ…。
「毎日毎日、雨ばっかで嫌んなるねー…」
「湊、余計ジメジメするからやめろ」
「ひどいな、渚〜」
今は放課後で、教室で湊くんたちと話しながら、桐山さんたちを待っていた。
この学校に慣れたのは、間違いなく湊くんたち始め、みんなのおかげだと思う。
「それにしても、汰斗たち遅くない?」
「何か用事があるんだろ、そのうち来るよ」
「……渚くん?なんかイライラしてない?」
「あ?…べつに…」
「あのね、夏恋ちゃん、渚さ、雨の湿気で髪がクルクルになるのがイヤなんだって」
「湊、余計なこと言わないでよ」
湿気…天パかな?
そういえば二人とも、梅雨に入ってから毎日髪がいつもよりフワフワしてるな…。
そういうことだったんだ。
湊くんに締め技をかけている渚くんと、「ギブギブ〜」と笑いながら渚くんの腕を叩いている湊くんを見ながら、そんなことを思った。
「二人とも天パなんだ?フワフワしてて可愛いと思うけどなぁ…」
気づいたら、思っていたことがそのまま声に出ていた。
だって二人とも可愛い顔してるから、余計可愛く見えるんだもん。
「ありがとー、夏恋ちゃん」
「……かわいくねぇし…」
そんな私の言葉への反応は、それぞれだった。