醜女と呼ばれた姫





「申し訳ありません、父上」

「藤……」






 几帳ごしに声がした。そこから顔を覗かせることもなく、若草の姉であり娘の藤が声を発した。





「私が、こんな醜女だったのが悪かったのです。お役に立てず、申し訳ありませぬ」






 祝い品を持たせ、姉妹は男のもとへ嫁いだのはよかった。

 だが、半年もたたぬうちに姉である藤が離縁されたのである。



 この時代、男の立場は大きい。結婚は親が決めることもしばしばである。離縁されたらそれまで。


 藤はなくなく父の元へ戻ってきたのだ。家同士のつながりもこの時代、大きな意味をもつゆえに、藤はそういったのだ。






< 3 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop