吉住との出会いは、お互い若かったから成り立ったものだろうと思う。

 ナンパだった。

 当時18歳、高校3年生の私は、その時既に大阪の大学に進学することが決まっていたため、年末からは早くも遊びほうけ、コンビニでアルバイトをしていた。

 冬休みのみ、午前7時からのシフトを組んでもらい、遊ぶ金を貯める。卒業旅行のための旅費を目標金額にし、日々真面目にレジを打っていた。

 入店して、3日目くらいだったと思う。

 吉住が客としてレジに並んだのは。

 こんな朝早くに、かっちりダークスーツを着こなした、茶髪と疲れた表情。どう見ても、朝帰りする夜の人だった。

 だがそれは後々思い出した印象で、その時は何も思わずレジを打っただけ。

 レジを打ち終えた後、すぐにその場から離れた吉住は、一度店外に出たがすぐに戻ってきた。そして、レジの近くに寄り、こちらが話しかけるのを待っているようだったので、金額が間違っていたかなと不安思い、こちらも相手が話すのを待った。

「すみません、あの……いや、いいです」

 ずっこけるようなセリフだけを残して、すぐに去る。

 驚いて、近くにいた先輩に聞いたが、なんということもなく、相手の勘違いか何かだろうとその時は思った。

 だが、午後4時になって、自転車にまたがろうとするなり、黒い乗用車からスーツの男が出て来るのが見えた。

 それが、朝会った、吉住だった。

 相手は近づき、少し、会釈をする。

 こちらも、わけが分からず、つられて少し頭を下げた。

「朝、栄養ドリンクを買って、レジをした者です。覚えていますか?」

 吉住は、朝の恰好のまま、こちらをじっと見つめた。

「えっ、はい」

 やっぱり何か言いたかったことがあったんだ、とかなり不安に思いながら自転車を降りた。

「すみません、僕はこういう者です」

 さっと胸ポケットから名刺入れを取り出し、名刺を差し出された。

 戸惑いながら、受け取る。産まれて初めて手渡された名刺は黒く、白い文字で英語で書かれていた。

 名前だけが、吉住 修三 (よしずみ しゅうぞう)と漢字である。

 白地に黒い文字が名刺だと思い込んでいた私は、黒い名刺もあるんだ、と感心して見入った。

「裏にプライベート用の電話番号とアドレス、パソコンのアドレスを書いてあります」

 そう言うので、裏も見た。ちゃんと白いペンで分かるように書かれている。

「良かったら、お付き合いを前提にお友達になってほしいです」

 吉住は、しっかりとした口調で言った。

「えっ……」

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