子犬系男子
2



これはいったいどういう状況なのでしょう。

「愁先輩!おはようございます!」

「…オハヨウゴザイマス。」

状況が理解できず思わずカタコトに挨拶してしまった。







いつも通りに家を出て学校に行くため駅に向かうと、昨日ぶつかった男の子が改札の前でキョロキョロしていた。

友達でも待っているのかと思ってそのままホームに行こうとしたところ、見事腕を掴まれて止められてしまった。

そして冒頭の状況に至る。



「えっと…何か御用でしょうか…」

遠慮がちに聞くと「はい!」と満面の笑みで答えられる。いったいなんだというのだ。

「愁先輩と登校したいなーって思って!」

またも満面の笑みで、しかも私の手を握りながら言ってくるもんだから思わず笑顔が引きつる。

そういえば何故彼は私の名前を知っているんだろう。

昨日教えたっけ?いや、教えてないよな。

「あのさ、ささやかな疑問なんだけど、どうして私の名前を知ってるの?昨日言ったっけ?」

そう質問すると彼はキョトンとした後すぐに、あぁ!と言って口を開く。

「昨日の放課後に学校で調べたんですよね!」

サラッとストーカーのような発言をした彼に思わず距離をとってしまった。

「あの、七宮くん?」

「七瀬閭です!」

「あぁ、うん、七瀬くん」

「なんですか?」

「キミは私に何をして欲しいんでしょうか…」

「一緒に登校してほしいッス!」

昨日知り合った…っていうかただぶつかっただけなのに、天使のような笑顔でなんて図々しいことを言うんだこの子は。

「何故いきなり一緒に行こうと思ったんでしょうか…」

そもそも何故私が使う駅を知っているんだろう。もう怖いからこのことは聞かなくていいや。

「俺、先輩のこと好きなんです!」


ん…?

…は?…え、いきなり何?

「でも先輩とは昨日知り合ったばっかりだし、付き合うならお互いのことをちゃんと知らなきゃダメだよなーって思って!」

少し顔を赤くしながら勝手に話を進めているけど付き合うって何?私あなたと付き合う気とかないんですが。

「あの、先輩…大丈夫?」

ポカーンと口を開けている私の顔を七瀬くんは覗き込んだ。

「…付き合うって、キミと私が?そもそも昨日知り合ったばかりで好きってなんなの?もう少し考えて発言したほうがいいと思う。」

少し強く言いすぎたかな?でも、こういう子にはこのぐらいはっきり言わないと分かってくれないと思う。

それじゃあ、と言って行こうとする私の腕をまたも七瀬くんは掴んだ。
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