焼け木杭に火はつくか?

(10)

社長、ズルいっ!
みんな入稿前で夜中まで残業してんのに!

店に入るなり、吠えるように喚き散らして夏海への文句を並べ立て始めた英吾を、三人で「煩い」「黙れ」「座れ」と叱り飛ばして大人しくさせる。
なんとなく妙な雰囲気を嗅ぎ取ったのか、眉間に皺を寄せ眉を寄せながらも口を閉じた英吾は、渋々という様子で良太郎が勧める椅子に腰掛けた。
夏海と良太郎に挟まれるようにして座った英吾は、何事なのと聡に問いかけようとしたが、夏海の声がそれを制するようにかかった。


「英吾。あんた、私と長谷のこと、知っていたのよね?」

さっそくとばかりに夏海が取調べのような雰囲気で英吾にそう問いかけた。

「付き合ってたってこと? えーとね。サトルさんと答え合わせしたら判った」

いつもと違う夏海の様子にますます英吾は顔をしかめて、助けを求めるように聡と良太郎を順繰りに見た。

「長谷のこと、私をパン嫌いにさせた元カレって言ったそうね。間違いない?」

尋問口調の夏海にそう問われた英吾は、神妙な面持ちで素直に「はい」と一つ頷いた。
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