紺碧の海 金色の砂漠
【紺碧の海 編】

(1)恋のパラダイス

(1)恋のパラダイス



透き通るような青い海、どこまでも続く白い砂浜、写真で見ただけの楽園《パラダイス》が眼下に広がる。


「アル! 見て見てっ。海がある、海が! 凄いよ。ビーチがあって人が泳いでるっ!」


舞はおよそ一国の王妃とは思えぬ脳天気さで、はしゃいだ声を上げた。


「舞、海に囲まれた島国で育ったのであろう? 何がそんなに嬉しいのだ」


ミシュアル国王は専用席に腰かけたまま、隣の席で窓に張り付く新妻を不思議そうな面持ちで見ていた。


確かに日本は島国だ。海に面していない県のほうが少ない。多くの子供が親に連れられ、一度は海水浴を体験するだろう。

だが、舞にはその経験がなかった。

海と言えば潮干狩りが精々で、可愛い水着を着て海の家でヤキソバを食べたり、ビーチで男の子にナンパされたり……。


「……したかったのか?」


舞が嬉々として語る“憧れのビーチサイド物語”をミシュアル国王は不機嫌そうな表情で聞いている。


「まあ、水着とか自信なかったから、特には……。でも、アズウォルドのバカンスなんて夢だったなぁ~」
 

< 1 / 243 >

この作品をシェア

pagetop