雨が見ていた~Painful love~
0-zero.



「美織~!!紹介するね!!
私のカレの藤堂響弥(キョウヤ)くん!!」




とある日の
何気ない日常の中の一コマ


最近出来たカレを紹介する、と親友の綾音(アヤネ)に言われて。初めて立ち寄ったレストランで私はカレに再会を果たした。


黒い髪、漆黒の瞳。黒ヒョウのようにしなやかな身体に鋭い眼光。少しだけ日に焼けた肌に、厳しいトレーニングで美しく鍛え上げられた筋肉。男の人にセクシーっていう言葉が合うのかどうかはわからないけれど、目の前にいる彼は極上のオスの色気を辺りに振りまいている。




――キョウ…ちゃん……



私の目の前にいるカレは、私の大切な人。
記憶の中の彼よりも少し背も伸びて、身体つきもガッチリして、随分と大人っぽくなったけれど…彼は、あの夜。忘れたくても忘れられない、あの雨の夜に永遠にサヨナラをしたと思っていた私の大切な大切な人…だった。




カレの自信満々な笑顔が好きだった。「美織!」と呼ぶ強い声。強引に連れ出してくれる、この大きな手にどれだけ助けられたことだろう。


でも‥‥あの日以来、永遠に会うことはないと思っていた彼。2度と会うはずもなかった彼。


そんな彼に思いもかけないところで再会してしまった私は、身動き1つできず、口1つ開けることすら出来ず、ただ呆然とカレを見つめることしかできなかった。


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