「では、次の問題を横井くん」
先生はボクのことをいつも横井くんと呼ぶ。
それが嫌で嫌で仕方なかった。
「純くん、指されてるよ」
隣の席の香川さんもボクのことを純くんと呼ぶ。
これも嫌で嫌で仕方がない。
ボクの名前は横井純。
高校2年で、性別は女だ。
ボクは自分のことを「ボク」と言う。
短髪で、スポーツが得意で、何より見た目が男っぽいのだ。
それに名前も男っぽからよく間違えられる。
でも、ボクは「横井くん」でも「純くん」でもない。
男の子じゃないんだから、君付けで呼ばれるのは嫌だ。
だから、絶対に返事なんてしてやらない。
「………」
ふーんとペンをくるくる回しながら、絶対に前を見ない。