NY恋物語

お腹はすいていたのに
フライトの疲れと少々の時差ぼけで
思ったほど食べられなかった私とは
比べ物にならない目の前の彼の
見事な食べっぷりは
見ていてとても気持ちがいい。


「時差ボケしてたら
仕事になりませんからね」と
にっこりと笑う彼が
機内での夕食の後で
熟睡していたのを思い出した。


時差ボケをしない為には
機内でしっかり寝て
身体を現地時間に合わせてしまうのが
一番いい。
けれど私はどこでも熟睡できるという
タイプではなく、それができなくて
毎回苦労をする。今回もそうだった。


「ん、美味い!」


とても到着した当日とは思えないほど
旺盛な食欲の元気な鳳を
羨ましく思いながら
その口角から少しはみ出したソースが
ふと気になった。


「あの・・・」

「はい?」


視線を合わせ、手を止めた鳳の顔に
無意識に指先を伸ばして
ソースを拭い取った。


「…す、すみません」


真っ赤になって俯く彼に
こちらが恐縮してしまう。


「あ、ごめんなさい。つい…」

「い、いいえ!そうじゃなくって…
かっこ悪いな、俺」


そういって苦笑いする彼に
つられて私も笑った。
気持ちが落ち着いてきたのは
食事をしてお腹が温まったからか
それとも 鳳のこの笑顔と
優しさのせいだろうか。

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