ちよちよみちよ
ちよちよみちよ



休み時間に教室を出て行く時、千代はいつも僕の席の前を通る。

「タケイチ、どかーん」

何がどかーんなのかは分からないが、ガタガタしたナイロン製の膨らみを机に伏している僕の頭に押し付て通る。
多分、化けるためのポーチだ。千代の化粧は必要以上に濃い。
舌打ち混じりに僕が顔を上げると、待ってましたとばかりに千代の短いスカートがめくれ上がる。偶然なのか必然なのか、無駄にケツを上下に振って歩くからだ。
マーキングかよ、といつも思う。フリフリフリフリ、あたかも僕が自分の男であるかのように、匂いを振り撒きながら歩いている。
僕は、千代が去ったドアから吹き込む風に、くんくんくんくん鼻を鳴らしてみる。千代の甘酸っぱい香りが漂ってきやしないか。うむ。微かに香るような気がする。幼い頃から知っている、千代の神秘的な女子の香り。
ああ、でも、忘れちゃいけない。中二の夏、忠実な犬だった僕は見事に裏切られた。千代のスカートの中身に、期待なんかしちゃいけないのだ。もう、あそこは僕の聖地ではなくなってしまった。
けれどもいつかはたどり着きたい、魅惑のワンダーランドではあるのだけれど。



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