SoUnD~僕らの世界~

放課後、バンドの練習中直登が俺のところに来て「そういえばさ」と話を始めた。



「文化祭、未那さん呼ばねぇの?」


「未那を?」


「未那さんだって、雅の作った曲聴けたら嬉しいと思うぜ?雅の声で、雅の演奏で嬉しさ倍増!ってな感じで。」

「・・・どうだろうな。」


「またぁ。今朝から暗い表情だからあまり言わなかったけど、なんかあったんだろ。毎日何かあるんだな、お前らは。」


「お前らって言うなよ。」



「はいはい。それは雅が俺らに話してくれるまで、深く掘り下げないから。」


「さんきゅ・・・。」



ニカッと笑って「今、俺すげぇいいこと言った」と自画自賛する直登。


その隣から紗奈が「たまに!はいいこと言うわね」と、『たまに』を強調しながら首を突っ込んできた。



「とりあえず、未那さんに話してみたらどう?予定があったら来れないわけなんだし、ね?」


「・・・紗奈だったら、来たいか?」


「え?私だったら?」



「彼氏がいて、それでも他の男の誘い受けて、ここまで来るのかって。」


真剣に聞く俺の目と紗奈の目が、バッチリと絡み合ったまま動かなかった。



「そ、そうね。確かに、行きづらいかもしれないけど、それとこれとは別だとも思うし・・・。」


答えづらそうに、でもはっきりと答えてくれた紗奈に「さんきゅうな」と言ってまたギターを触り始めた。



未那に、俺の曲を聴いてもらう、か。


そりゃ、聴いてほしいし見てほしい。

でも、未那は来てくれるだろうか。



智さんのことを差し置いて、俺のところに来てくれるんだろうか。

そう思うと、言わないままの方がいいんじゃないかという気持ちが膨らんできた。

< 139 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop