良からぬことばかり考えていたせいかもしれない……


あの時、指輪は化粧ポーチにいれたはずだ。

玲は、ソファに置いた自分のショルダーバッグから、化粧ポーチを取り出し、中を探った。

「あれ?ない……」

そんなはずはない。
化粧ポーチをひっくり返し、中身を全て出してみたが、指輪はなかった。

保養所に落としてしまったのだろうか。

そんなことはない、
きっとどこかにある。

そう思いながら、ウォークインクローゼットに仕舞った旅行バッグを引っ張り出し、ポケットひとつひとつを丹念に調べた。

しかし、やはりなかった。

旅行の時着ていたサブリナパンツのポケットの中も、洗濯機の槽の中も見た。

夜11時近くになり、迷惑だと思ったけれど、スマホで保養所の電話番号を調べ、指輪の落し物がないか問い合わせた。

「ありませんね、出てきましたら、お電話致します」
電話に出た男性従業員は言った。


保養所にいったのは、一ヶ月以上も前の話だ。
今更出てくるわけがない。
もう諦めるしかなかった。

あんなところで指輪を外した自分がバカだった…

玲は後悔した。

「こんなときに、佳孝に、指輪をなくしたなんて絶対言えない〜……」
思わず、涙ぐむ。


あるはずのない、ドレッサーとチェストの引き出しも調べた。
無意識のうちに仕舞ったのかもしれない、と思ったから。

藁にも縋りたい気持ちだった。
とことん調べないと諦めがつかなかった。

なにかの拍子に隙間に落ちたのかもしれない。

玲は、自分のベッド下の収納を調べることにした。

重いマットレスをずらし、ベッドの床板を外す。

その収納スペースには、玲が独身の時、使っていたホットカーペットが仕舞ってあった。
床暖房の今では、もう使われていないものだ。

その隙間には、大きな透明のビニール袋に入れられた十数個のクマの縫いぐるみとステンドグラスで作られた小箱が置いていてあった。


「あっ、ルルだ。懐かしい!」

玲はビニールを開けて、ツンツンした茶色い毛のクマの縫いぐるみを取り出した。


縫いぐるみは、昔、短大生だった玲が集めていたものだ。
結婚しても捨てられず、ここに仕舞った。

短大一年の18歳の時、元町のファンシーショップで、『コアラみたいなクマ』の縫いぐるみに一目惚れしてしまった。

それがルルだ。
大きな黒いビー玉のような目が玲の心を掴んだ。

体長20センチくらいのその縫いぐるみを一時期、カバンに忍ばせて持ち歩くほど愛着した。

それから、玲の縫いぐるみ集めが始まった。

ルルの友達を増やす、というのが口実で、洒落たテディベアではなく、クマの縫いぐるみが良かった。

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