遠い日の夢の中で
夕グレ
「明日どうしよう」君は言う。
僕は明日ってあるのかななんて考えたりする。
でも君には普通に答えるのだ。

「明日は公園に行こう」

すると、君はまた僕に訊く。

「公園に行って何しようか」

「ぶらぶら歩くのもいいし、ベンチに座っておしゃべり。青い空に、青い雲、あれは鯖雲、これ鰯雲、鳥雲に入るとは春のこと」

そして、君は眉を八の字にする。

「何、ひとりでぶつぶつ言ってるの」

もう、僕は真面目に答える気なんてさらさらない。

「ルノーさ」

「なにそれ?」

ルノーと言えばルノー、ジャンヌダルクといえばジャンヌダルク。
ダルビッシュでもいいけれど。
何ならハッシュドビーフにする?
君は怪訝な顔で僕の目を覗き込む

「変なの、あなたどうかしているわ」

「うん、確かに」

言ってるそばから頭は月見そば。もう僕の頭の中は妄想半島ドライブ中。

「ねぇ、あなた最近休暇中だからって家に引きこもってばかりで可笑しくなっちゃったんじゃないの」

君の言葉は高度1万メートルの旅客機の中。僕には到底届かない。

「いいね、そのナチュラルフェイス。なかなかいないぜ君みたいなの」

「やっぱり、変よ。あなた、別人のよう」

「いいじゃないか、変でも、変わってたって、別人だって、隣人だって。
毒林檎をかじって死んだ白雪姫のように君は美しい。
そして、僕は君を向かえに行きキスをする。そして、君はもっと美しくなって生き返る。
どうだ、こんな妄想も悪くないだろう」

いつの間にか、君はいなくなっていた。呆れてしまったのだろう。
君に呆れられた僕は情けなくなって、途方にグレるのだった。

秋の夕暮れ
妄想半島
紅葉狩りツアー




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