アネモネの丘

Prologue

　あの時出会っていなければ。
　あの楽しい日々がなければ、
　こんな辛い苦しい思いをしなくてすんだのに。


　夕暮れの紫の可憐な花が咲く丘で交わされた小さな約束、甘い蜜約。


　この世界に来なければこんな思いはしなくてすんだのに。

　私はどうしたらいいのだろう？

　近い将来、誰かほかの女性の隣で微笑むあなたを私は冷静に見ることができるだろうか？



　今のこの気持ちが思い出になる日が来るのだろうか？

　

　今の私にはわからない。

　

　でも、あなたには不幸になってほしくない。

　私が身を引くことが……あなたの前から姿を消すことがあなたの為になるのなら、私はあなたに心にない残酷な言葉を言って姿を消そう。





　いつか……思い出になった時、私はアネモネの丘に戻ってくる。