キラリ
「華麗なる大円舞曲」には、どのように感情を込めて弾こう。



ショパンのワルツは必ずしも舞踏用に作られたとは限らないそうだ。


しかし大「円舞曲」というからには、やはりダンスミュージックと解釈して弾こう、弾きたいと私は考えた。


曲そのものが持つ起伏は最大限に活かして――



私の脳裏に、華やかなダンスホールの情景が浮かび上がる。


このワルツに合わせて踊るのは、大人しくエスコートされるお嬢様タイプではなく

男性以上のパワーを秘めた、ダンスを心から楽しむ女性のような気がする。


きっと赤いドレスが似合う美人で、一度踊り始めると少しぐらい髪が乱れても、ドレスの裾が翻っても気にしない――


私の演奏で、聞き手にもそんな女性の姿が見え

同時に、踊る事に喜びを見出だす彼女の気持ちも伝えられれば……。




想像の中の美女を追い掛けるように

私は再び、鍵盤に指を走らせた。
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