テディベアの彼女
幽霊と陰陽師たち
その日は、長期の仕事が終わって帰る途中だった。

事故があったとかで、交通規制がかかっていて
先に進めなくなり暇になった俺は近くのパーキングエリアに車を停めて
本当にただ何となく
その現場へ歩いて向かった。

いざという時は職業を盾に乗り切ろう、と
軽い考えで。



向かった先には
明らかに大事故だっただろうとわかる事故車両があった。

だがそことは別に、茂みの中から何かを感じた。

自分の直感に従って
その何かを見つけ出す。

茂みの中には
車からとんだのだろうか、
可愛いテディベアが落ちていた。

しかもただのテディベアじゃない、

これは…


強制成仏させようと懐から数珠を取り出した時、


『まってください』


テディベアが喋った。

いや、正しくは
テディベアの中に入り込んだ少女の霊、だ。


『叶えたい願いがあるんです。終わったらすぐに、行くべき道に戻ります。

だからお願いです、
今は待ってください。』


とりあえず彼女の話だけでも聞こう、
と数珠をしまう。

彼女がホッとしたのがわかった。


「で?何があった。」
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