君への小さな想いを掲げて *my first love*
【キ】前の席のあの子


______それは中学3年の受験帰りのまだ寒い2月の事。


受験会場を出た私は真っ先に駅に向かう。

受験が終わったあとは何となく緊張して家に一刻も早く帰りたかった。

熊のパスケースに入った定期券で改札を抜けて、ホームへ降りる。


「あ、待って待って!!」

しまりかけた電車のドアにかけよると、再びドアが開いた。

既に電車の中にいたサラリーマンや学生達は不快そうに顔を歪めてこちらを見る。


「っすいません…」

電車に慌てて乗り、小さく頭を下げた。

何となく嫌な空気になったのが耐えられなくなり、慌てて別の車両に移る。

…なんか目立っちゃった。

ガランと席の空いている車両を見て、安堵の息をつき、腰をかけた。

バッグを体の脇に置いて、顔を上げると、目の前に人がいるのに気づいた。





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