そんな君も大好きだから
1.出会ったときは



ねえ、隼人・・・


こんなにも愛おしいのに


隼人との距離が、こんなに


あるなんて悲しいよ。


いつからだろ。


こんなにも隼人を想うようになったのは・・・


「杏璃―!次、移動教室―。急げー」


元気なその子は、朱莉。


茶髪でハーフの女の子。


150センチで小柄で細い。


羨ましいぐらい可愛い!


あたしも、朱莉ぐらい可愛かったらなー


「全部、聞こえてますよー杏璃さーん」


えっ!?


「なんで!?」


「心の声のつもりだった?丸聞こえ」


「あー恥ずかしいっ」


なんて照れていると


「あんた、可愛すぎ!!」


「へ?」


朱莉が変なことを言い出した。


「性格も顔も可愛いなんて、ずるい」


キーンコーンカーンコーン


「やばっ チャイム鳴った!!走るよ杏璃!」


「待って朱莉ーーーーー」


全速力で走る朱莉に必死で着いて行った。


保健室の前を通ろうとしたとき


ーーーーーードンッ


「あっごめんなさい」


落ちた教科書やノート、筆箱とか拾ってた時


「おい」


頭上から低い声が降ってきた。


あまりにも低くて怖くなったから


「はいぃぃ!」


変な声を発しながら立ち上がった。


「あん・・・り?」


その声に俯いていた顔を上げた。


「隼人・・・・・」


「大丈夫か?」


優しい声でスカートに付いた


埃を払ってくれた。


「あ、ごめんね。ありがと」


そう言って、また行こうとしたとき


「ねえ、隼人ぉー。もう一回シよーよぉ」


保健室の前で立っていた私と隼人。


そこに出てきた女の子。


二年の子かな。


なんだか悲しくて


「邪魔してごめんね、隼人・・・ごめん。」


そう言って屋上まで走った。


屋上に続く大きい扉を開けたとき


大きい空が続いてた。


雲一つない空を見た瞬間


「隼人の・・・ばかぁ・・・うぅ・・・ヒック」


涙がボロボロ零れてた。


力がなくなって


座り込んだ。


教科書を地面に置いて


大空を見るように


寝転がった。


「隼人ぉーーー・・・・・す・・き・・・」


気付けば泣きながら寝ていた。


「ん・・・」


目が覚めた。


うっすらと目を開ければ


薬品のにおいがした。


保健室・・・?


あたし、屋上で寝てた気が・・・


そんなことを心の中でぶつぶつ言ってると


「杏璃・・・?」


ベッドに頭を預けて寝ている隼人がいた。


「隼人っっ!?!?」


なんでいるんだろー


なんて反応とは正反対の思いを


胸に抱いて隼人を見た。


「杏璃」

歪んだ隼人の顔がなぜか切なく感じた。


「どうしたの?」


聞こうとしたとき


隼人の手が伸びてきて


一瞬で隼人に抱きしめられていた。





< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop