沈み込みそうになるシート。
ちょっと気を抜くと、そのまま微睡んでしまいそうになる。


天気のいい冬の午後。
お尻から微かに伝わる振動。
プラス絶妙なシートのクッションのせいで、我を忘れて寝こけたくなった。


だけど。
キーッと音を立てて車が停まる。


そのブレーキ音と身体に感じた慣性に、ハッと目を開けた。


目の前の状況を確認する。
カーステレオの弦楽四重奏が心地良く耳をくすぐる。
フロントガラスの向こうには、ガードレールに遮られた海。
窓から吹き込むちょっと冷たい潮風。
微かに煙草の煙。


「怒ってる割に、リラックスしてるみたいだね。
君も元は素直だって証拠かな」


小馬鹿にしたようにクスクスと笑う声が耳をくすぐる。
それを聞いて身体をしっかり起こしながら、ハアッと溜め息をついた。


「言われなくても素直よ」


ドアに肘をついて窓の外を眺めたまま、素っ気なくそう言う。


それを聞いて、彼はクッと笑った。


「素直、ねえ」


嫌味な笑い方。


だけどそのまんま怒っていると思われたら癪だから、あくまでも顔を背けたまま。


「そんな皮肉言う為に、わざわざ仕事をオフにした訳じゃないでしょう?
人気者で忙しくて、デートする暇もないあなたが」

「当たり前じゃないか。君の為に決まってるだろ」

「白々しい」

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