門を通り抜ける。
屋敷の前の車寄せでブレーキがかかった。
車が停止したのを身体の感覚で確認して、私はシートベルトを外す。
運転席から降りた彼が助手席側に回って来てドアを開けてくれた。


作られた完璧な笑顔。
素っ気なくありがとう、と言って、手を借りて車から降りた。


屋敷のドアに手を掛けると、そのドアも先に開けられる。
紳士的な振舞いのはずなのに、そこにはどうしても含みが感じられる。
私は小さく肩を竦めて、隣りに立つ長身の彼を見上げた。


「……あなたも中に入るの?」


私を見下ろしながら、彼は口の端を軽く上げて笑った。


「明日の役員総会で使う資料を取りに来ただけです。
すぐに帰りますからご安心を」


そう、と短く返事をして、屋敷の中に足を踏み入れる。
ドアを閉めると、彼は別棟に続く通路に向かって行く。
その先にあるのは書斎だ。
資料を取りに来たというのは嘘ではないんだろう。


その背中を見送ってから、私は自室に向かう階段を昇り始めた。

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