声が遠くなる。


ほんの少し目を閉じたら、意識まで遠退いた気がした。


ざわめく声。纏わりつく空気。
当たり前にある普通の日常から身体ごと切り離されて行くような、奇妙な浮遊感。


「ユナ、ユナ!」


声がする。
割と近いところから。


「おい、ユナ! 何寝てるんだよ?」


今度は肩を揺さぶられた。
それを自覚して、ようやくハッと目を開けた。


そしてほんの一瞬、ざあっと視界が真っ赤になった。


「!」


無意識に身体を竦めて、一度しっかりと目を閉じる。
そして今度はゆっくり目を開いて、さっきと同じ空間を見据えた。


曇ってグレーがかった冬の空。
並木道に立ち並ぶ木の葉はすっかり落ちている。
どこにも赤い風景なんか見当たらない。


それを確認して、思わず息をついた。


「……って言うか。
彼氏とデート中に普通に寝るなよな~。失礼な女」


呆れたように不機嫌そうな声がして、隣りを見上げた。


そしてその姿を目に映して、ああそうか、と、現実が戻ってくる。

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