冷たい風が頬をくすぐる。
そんな感覚に、私は目を覚ました。


目に映るのは見慣れた白い天井。
そこが自分の部屋で、身体を横たえているのが自分のベッドだと認識する。


一瞬、自分の置かれた状況が把握出来なかった。


こめかみを指で押さえながら目を閉じた。
そして髪が風で揺れるのを感じて、ようやく意識が戻ってくる。


ハッとして身体を起こそうとした。
わずかに走る脇腹の痛みに顔をしかめる。
だけどその痛みが、私にその夜のことを思い出させてくれた。


ムスクの香り。
背後で動いた空気。
口を覆った革手袋の手。
耳元の息遣い。
そして、みぞおちに沈んだ拳。


あのまま意識を失って、目を覚ます場所が自分の部屋だなんて。
そんな平和なことがあるんだろうか。


「目、覚めたの」


誰もいないはずの部屋に声が響いて、一瞬身体を震わせた。


「だ、誰!」


ほとんど反射的に声を上げながら。
ある意味予想通りの展開にホッとしてもいた。

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