シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

協力


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無声音の二分割映像というのがもどかしくてたまらない。


「桜ちゃん、こっちの訳!! 聞こえないーっ!!」

「葉山、今紫堂は如月になにを言ったのさ!?」


無声音で理解できるのは桜ちゃんだけ。

だからあたし達は、2つの映像を見ながら桜ちゃんに同時進行通訳をお願いしていたけれど、場面は刻々と変わり続けるし、2種交互通訳だからそれぞれつぎはぎだらけで、全体像が見えてこないし。

焦りながらも律儀に通訳をしてくれる桜ちゃんが、いい加減可哀想になってきた。


皆で紅皇サン……朱貴を期待をこめた目で見たけれど、それをわかっていて受け流される。


――人に頼るな。


皆から慈悲深い神と評判の紅皇サン、本当に優しい方なんだろうか。


そして迎えた場面が、リスの玲くんのくるくるキーボード打ち。

思わず由香ちゃんと紫茉ちゃんとで「ふぉぉぉぉ」だ。


傍目では狂喜乱舞しているとしか思えない玲くんの動きは、由香ちゃん曰くちゃんとプログラムを組み立てているとか。小さい全身を使ってキーをぽんぽん叩く様は、さながらもぐら叩きの変形の様で、"約束の地(カナン)"のワンコ叩きを思い出してしまったあたし。


あのなんとも馬鹿げたゲームの発案者が蒼生ちゃんで、彼が必然に動く男という理由から考えれば、今玲くんがキー叩きをしているのも、ある種伏線だったのかと勘ぐってしまう。


ただあの時のワンコ叩きと違うのは、今の玲くんは異常に嬉しそうだということ。


玲くんの気を引いたのは、ゲームという種なのか、キーボードを使うというところなのか、プログラムを作るというところなのか、早さを披露するというところなのか、わからないけれど。


――さすがに蒼生ちゃんだって、玲くんがリスになって、喜びながら"キー叩き"で遊ぶことは、予想できないよね。それとも蒼生ちゃんが、頑張っている玲くんに後でご褒美あげるよと告げていたのが、実はあのワンコ叩きの真実なのかな?


――神崎……。師匠は喜んでも遊んでもないと思うよ……?


どう見ても玲くんは喜んで、キーの上で踊り狂っているようにしか思えない。

自慢の美しい笑顔は、リスになってもいつも以上に煌めいて見えて、思わず見ているあたしも幸せな気分になってくる。


――すごいぞ玲。キーボードを叩きながら、朱貴から習った武芸の基本形の復習か。


わかる人は、玲くんのさらなる凄さがわかるらしい。
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