シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

世界 煌Side

 煌Side
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「裏世界は――

人であるなら"無意識"の下層レベルで共通できる…"普遍的無意識領域"と呼ばれる世界の…更に奥にある。厳重に防衛本能に護られている…危険な場所。


人の心の…最深層部にある」



櫂の声が、頭に残響して反響している。



俺は、俺達は――

此処まで、急かされるようにして駆け抜けて来たんだ。


不可解な光景を舞台にして。


此処には居ねえものを、此処以外にはありえねえものを、"定義(ルール)"のように思い込むことで、この場所はこういう処なんだと、無理矢理納得してきたんだ。

順応させられてきたんだ。


例えば俺の頭に居る、カリカリ煩えリス。

何処の世界に、知り合いの…人間の言葉を話す怪力阿呆タレリスが、人の頭を堂々と"巣"にしてのさばるよ?

2リットルのポカリ飲んで、腹膨れリスで収まるか?


如何に俺が愚鈍でも、おかしいことくれえは判るつもり。

だけど不思議と馴染んでしまった、やけに人間臭いリス。


そんなリスを許容しているこの世界。


ありえねえことは山々なのに、次第に"そういうものか"と思えてしまうこともまた…不可解だ。

異世界だと突っぱねられねえのは、俺の中に何処か…俺達の育った表世界と共鳴する処があるからで。

この先にあるという裏世界。


それを櫂は…

"心の深層"にあると言い切った。



心の中にあるからこそ、入口であるらしいこの場所は、心という潜在意識で構成された、何でもありの…"夢"の世界となりえる、そういうことだろうか。



裏世界――。


確かに裏世界の所在は不明で、情報持ちの桜でさえ知らねえ。

あいつの情報源は、裏世界に行き来出来るという奴からのもので、あいつ自身が、裏世界に潜って探り得たものじゃねえんだ。


あいつが知るのは…表世界と入口との接続場所。

…あの喫茶店止まりだろう。


そして玲とて、どんな情報網を細かくして、裏世界へ至る道を探索しようとも…その結果は、膨大な情報が詰まった電脳世界からでも見つけることが出来ないものだ。


それくらい、裏世界は謎めいている。


灯台下暗しとはいうけれど、裏世界が己の"心"にあるとすれば。

此程見付かりにくい場所は他にねえとも思う。


だけど。


裏世界に行けるのは一握りの者達だとはいえ…


人間が――

心の中にひょいひょい行けるものか?


心って、そんなに拓けた…遊園地みたいな、"ウエルカム"&"カモン"のオープンな場所か?


そんな突っ込みが俺も小猿も出てこねえのは…身近にそうした人間が居て、その中に潜った経験があるからだろう。


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