シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

試験 玲Side

 玲Side
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カリカリカリ…。

鉛筆が忙しく動く音がする。


割り当てられた机の上には束になった問題用紙。

加減乗除の単純な計算問題や文章問題、図形を使った空間認識問題、言葉の並べ替えによる文章完成問題や論理問題が、次から次へと出て来る。


それは高校生の現時点の勉学の知識…学習の熟達度を推し量るというよりは、IQ…知能考査に限りなく近いものだった。


それに違和感を覚えつつも、知能考査を入試にしている難関大学もあるし、更には生存競争が激しい塾の現状において、難関大学の合格率を上げるために…先天的な能力重視をするのもまた、経営戦略の1つとしてはアリかもしれないと思い直した僕。

実際マーク方式の選択問題では、選択肢の形を見ただけで答えが導かれるという奇抜な解法があるけど、それを直感にも通ずる閃き…先天的な知能と結びつけ、観点を変えることで正解に導く"技術"を教えたとしても、それが正解という結果をもたらすものならば、普通の塾のように時間と手間をかけて知識の備蓄に努めた結果と…結果論的には同じ事となる。

過程は問わず結果ありきこそが、塾の生き残る術。

塾もイロイロ考えるものだ。


晴香ちゃん曰く、黄幡塾は成績優秀者には別棟で特別授業を受けることになる"特待生"制度があるらしい。

特待生の合格率は驚異的で、難関大学よりも狭き門なんだとか。

それだけに世間からも教育機関から注目されているらしく、特待生を武器に推薦を有利に進める学生もいるらしい。



カリカリカリ…。


閃きや瞬間的な記憶力を要求される問題は、まるでクイズのようで…だからこそなのだろう、横並びの2人の女の子の手は止まることはなく。


カリカリカリ…。


何だか…リスやハムスターが、餌をカリカリしているような音に聞こえるね。

そう思うのは…かつて僕がリスに例えられていたせいもあるかもしれない。


両手で頬杖をつく僕。

手首から、月長石のバングルが見えた。


芹霞が西早稲田の看板を見て動きを止めた時、僕はこのバングルの一件を思い出してしまった。

こんなに好きで堪らないのに、嫉妬でバングルを地面に叩き付けた僕。


その時僕を揶揄したのは、なぜか姿を現わした久涅。

そして彼は、先程も桜華に現われ、芹霞に吹聴した。
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