いじめのその先
言えない言葉

半年前と同じ気持ちを想いながら、私はその光景を見ていた。

初めは見ていた周囲のクラスメートも、次第に水などをかけだしたり消しゴムを投げたり、黒板に暴言とも思える落書きをしたりとしている。

どこかの絵画にあるような、イジメを描写するものが目に映っている。

私は言いたかった。
でも言えなかった。
言おうと言葉を出そうと思ってみるも、どこか詰まる喉奥。

悔しい―悔しい―
気持ちが募るばかりで言葉がない…。

「…千南ちゃん。千南ちゃん!」

ハッと顔を上げると隣の席の幸恵ちゃんが、黒板前で私を手招きしている。

「千南ちゃんも一緒に書こうよ!!」

私も一緒に…?

私はどう返事をしたら良いか分からず、立ちすくんでいた。

すると飯田さんのそばに居た佐々木君が無理矢理とも思える力で、私にチョークを持たせた。

「さっさとやれよ。」

不機嫌そうに一言言うと睨み付けるように私を見下した。

「………」

いまだに微動もしない私に対して、周囲から少しずつ不満の言葉が漏れ始めた。

「早くやれよ―」
「おせよ―」

「っ…」

どうしようと身体が震えチョークを落としになった時―

「男子やめなよ。」

一つの助け舟が出された。声の主は女子学級委員の紗羅ちゃんだ。

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