いじめのその先
大好きな人

私はみんなの後ろを歩きながら、先程の咲斗さんの表情を思い浮かべていた。
笑ってはいたけど、どこか寂しそうな目をしていた。

……この香り…。

風が強くなってきたとともに、潮の香りが漂ってきた。

私達は浜辺まで降りると、大海原を見つめるように並んだ。

「…で、私に何の用?」

「もちろん、半年前の海のことだ。」

「…」

「咲枝、本当のこと言ってくれないか?」

「…何度も言うけど、あれが真実だよ。」

「嘘。」

咲枝ちゃんの言葉を否定するように、星也君が声を出した。

「咲枝、あの時空也は意識があったんだ。そして言ってった、咲斗さんが自分を落としたってな。」

「………」

咲枝ちゃんの目が揺らいで、驚いた様子で空也君に視線を向けた。

「本当…なの?」

声に出す代わりに、強く頷いた彼を前に黙り込んでしまった。
しばらく沈黙が続いた後、空也君が声を出した。

「咲枝、どうしてそこまで咲斗さんを庇うんだ?正直に言えばこんなことには…。」

「別に庇ってるつもりはないよ。ただ…」

「ただ…?」

「私が…私達が悪いから。」

「え…。」

「…聞きたいことはそれだけでしょ。私もう行くね。」

踵を返して歩き出した咲枝ちゃんの背中に、私は問いかけた。

「咲枝ちゃん、私このままは嫌だよ。」

歩みを止めた彼女に更に言葉を重ねた。

「どうして咲斗さんを庇うのか知りたいし、理由によっては…」


「私が…私が問い詰めちゃったの!!」

「…?」
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