黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
そんな状態でも、今、自分の身体を支えている人物が誰なのかは、およそ見当がついていた。


…いや。

見当はついていたが、それはにわかには信じがたい事実だった。


だがしかし、俺が攻撃を受けてから倒れそうになるまでの、この短い時間。

近くに立っていた男(ヤツ)なんて、1人しかいない…。


「……30点……。
…ってとこだなぁ?」


…俺のすぐ頭上から、あの声。


先刻、

『…かわせるかぁ!? 吉良七夜ぁー!』

と言ってみせた、あれと全く同じ声。


なぜ……?


動かすことすらつらい口で、身体を支える人物にそう問いたかった。


……なぜ、自分でやっておいて、今更こんな真似を……?


そうもう一度、頭上の人物に心の中で問いただす。

そいつはそれを知ってか知らずか、静かに声を漏らした。


「この場でお前に倒れられると、いろいろと厄介だからなぁ。
…ただしこの負けの借り。
今夜、きっちりとぉ……身体で支払ってもらうぜ…?」


そこで声は途切れ、代わりに俺の胸を支える硬い腕に引き寄せられる。


そう。

それはまるで、抱きしめられるように。


<良雄好感度、+1(※)>


……静かなバス内。


……息を殺したように、シートでうつむくショートカットの女子生徒。


……徐々に乱れていく、バスの走行音。


──そして。


→【65】

/(※) 好感度の説明は、本編開始直前にあります。/
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