ジルとの対話
Chord A
ジルは朝になり、レイン通りを歩いた。
「実は今日もムーンキャットで演奏するんだが、ジルにシンセサイザーで出演して欲しいんだ。今晩、演奏できるか?」
地べたに座り込んで、キースが出演交渉をした。
「構わないよ、それは。」
ジルは承諾した。
「そうか。」
キースがだるそうな声で言ってるので、ジルは訝った。
「なにか気になるの。」
ジルはキースに尋ねた。
「なんでもない。」
キースは二日酔いにしては、酷く思い詰めたように呟いた。
「スティーブンのことかい。昨晩、話に出た。」
「わかるのか。」
キースが顔を上げ、ジルを見た。
「キースって、寂しいのが苦手みたいだから。」 
「そんなんじゃないさ。」
ジルは、何も言わず、朝靄に染み込む朝日の中に影を落とした。
キースがうつ向くと、ジルはキースの肩に手を置いた。
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