ガラスのお靴
長い前置き


「あんたってさぁ・・・・」
イッコ年下とはいえ幼馴染の男性に、
何言っているんだろうなーと、酔いきれない醒めた頭の一部分で思う。

失恋の慰めの活を、辛口でしゃべる。
行き遅れの年増の女が、だよ。

「彼女は15コ年下だったから、所詮世代が違うから感覚も違うのよ」
「彼女の方が積極的で、とてもラブラブだったんだぁ」
ら・・・らぶらぶ・・・・。
このクソガキ・・・・振られてざまぁみろって叫びたい。

うーん、実のトコ、先日、こいつが婚約しそうだと母に聞かされたとき、腹立たしく感じ、襲っとけばよかったかなって考えた・・・・しかし、実際こいつと向き合うと、その気になれない。

キスしたり・・・考えると気分が悪くなる。

「あのね、女は駄目となったら駄目、切り替えが早いの」
「友達に結婚を反対されたって言うんだよ、僕より友達ですか?」
また始まった。

女が他人を引き換えに言い訳を言ってきた時。責任転換のときは・・・。
どうも、彼女の場合は別に好きな人が出来たらしい、と、予測する。

「友達の意見のほうが大事なんですかぁー」

はぁ・・・タメイキ、
こいつは先ほどから、同じ愚痴を繰り返す。
「当たり前、友達の方があんたより付き合い長いし、何人いたのか知らないけど、あんた一人じゃ太刀打ちできないって」

「・・・・と、友達に、何言われたの、って訊いても、友達は答えてくれなかったって言うんだ、
これって・・・変だよね」

「えーとね、多分彼女は理由も話さない友達の様子に、色々想像しちゃったのね」
「?」
「女は想像逞しいのよ、私の知らないとこであんたが、友達を口説いたとか、女の子の悪口を言ったとか。
勝手に想像してあんたに冷めちゃったのかもね」
「そんな~」

「想像段階で気持ちが冷めるような恋は駄目だよ、
女の子は特に恋に恋しやすくて理想も高いから、幻滅した時は裏切られたってほどのショックを受けて、殺そうと計画されるよ。
夫を殺すのは簡単だからね」

「おいおいおい」
いきなり酔いの冷めた顔をする。ヒ・・広?えーと、名前はなんだったっけ、
突拍子もないことを言い出した自覚はある。

酔ったかな・・・思いながら続ける。
「今は家事の出来ない女の子も多くて、食べ物関係で内臓を弱らす手は使えないけど、過労死させるぐらいなら」
「お前・・・非現実」
「殺人なんて非現実よ、死体発見は二度してるけどね」

私が言うとあいつは本当に酔いが冷めたらしく神妙な顔をした。

私とこいつは小さい頃二人でよく遊んでいた。

二人一緒に裏山で捨てられていた女の子の遺体を発見し、その数年後に近所の大学生の首吊りした自殺死体を発見した。

思い出すと胸がむかつく・・・・私はもう慣れたけど、こいつはまだ駄目らしい。
真っ青な顔になり・・・トイレに、吐きに行った。



とりあえず、このトラウマがある限り、
あいつはまともに女の子と付き合えないと思っている。
自殺、殺人、主に子供に関する事件のニュースを聞くたびトイレに駆け込んでる。
知らない奴か見たら酷い誤解するかもなー。



まぁ、やっとつかんだ恋だが諦めなさい、
彼女は若すぎた。

ガラスの靴は穿いて見たいが、まだ白無垢の似合わない子だったのだろうから。

続く
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