猫が好き!


「あ、私の好きな銘柄、よくわかったね」
「え? 自分で指定したじゃん」
「違うよ。ビールの方」
「あぁ。それ、僕も好きだから」
「ふーん。おまえとは気が合いそうだね。帰ったら一緒に飲もうよ」
「うん。ありがとう」


 彼は戸惑うような表情で、少しだけ笑って見せた。


「じゃ、行こうか」


 声をかけて促すと、彼は荷物を持って、半歩後ろからついてくる。

 少し探りを入れてみる事にした。


「おまえ、ホームレス?」
「いや、違うけど」
「だよね。あの人たち特有の無気力感とか気怠さとかないし。どっちかっていうと、置き去りにされて途方に暮れてる子犬って感じ?」

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