愛しい声
♪.席替え

♪.席替え

 *花音side*

 まぶたが重い…。
 体がだるい…。

 昨日は宿題のレポートを書くのに
 2時までかかってしまった。

 ああああ~、眠い。

 私は机につっぷして寝る体制になる。


 「 よーし。それじゃあ、席替えするぞー 」


 うわああ。先生きちゃった…(´;ω;`)
 いつもなら楽しい席替えが、今日は憂鬱。


 「 花音! テンション低すぎ! 」
 

 ひなのはハイテンション…。さすが乙女。



     *



 数十分後。机を動かし移動完了。


 「 和田さんうらやましい~ 」
 「 いいな~ 」


 机につっぷしていると聞こえてくる声。
 和田って私だ…よね?


 その原因は隣の席にあった。



 「 和田さんだよね? よろしく♪ 」


 聞こえてきたのはとても澄んだ声。
 教室はざわざわしてうるさいのに
 すーっと私の耳に入ってくる。


 「 よ、よろしくっ… 」

 
 そっと頭をあげると、そこには
 千葉爽がいた。

 千葉くんは容姿も内面も完璧らしく、
 学校ではアイドルらしい。

 全部ひなのからの情報で、
 私はとくに興味なかった。

 でも、ジャニーズに入れるくらいの
 可愛い顔…、なーんて。


 「 千葉くんとなれなくて残念~ 」
 「 うんうん 」


 隣の席のまわりに集まる女子たち。
 かたかたと机が揺れる。
 
 その中にはひなのもいた。

 千葉くんは適格に返事をしているみたい…。



 「 和田さん 」


 …?
 私じゃないよね。


 「 ねえ、和田さん 」


 私はまた朝のようにゆっくりと
 顔をあげた。

 しーんと静まる教室。
 千葉くんの机のまわりには
 ひなのを含めた数人の女子。


 「 レポート見せてくれない? 」


 そういって手を差し出す千葉くん。
 手は白くて指は長い。
 
 きれいな手…。


 「 和田さん…? 」


 千葉くんに呼ばれ、我に返る。
 手に見とれてしまった。



 「 え、あっはい !!! 」



 急いでレポートをだし、差し出された手にのせる。


 「 ありがとう 」


 そういわれるまえに机につっぷした。
 澄んだ声だけがひびく。

 このときの千葉くんの表情、
 どんなんだったのかな。


 「 あの、レポート書きたいからちがうところ行ってくれる? 」


 まわりの女子たちに言っているのだろう。
 と、同時にチャイムが鳴った。


 「 ほらっ、チャイム鳴っちゃった♪ 」


 女の子みたいにいう千葉くん。
 容姿も可愛らしい感じだもんな…。

 ぞろぞろと席へもどっていく女子。
 私は机から教科書を取り出そうと、
 引き出しを覗き込む。


 「 デレデレしちゃって 」

 
 そう誰かがつぶやいたのにも
 気づかずに。
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