結婚白書Ⅰ 【違反切符】
彼女の過去


布団の中で うだうだして過ごす。

目は覚めてるが 起きて下に行くと お袋の説教を聞かされそうだ。

彼女との待ち合わせは3時 出かけるギリギリの時間に下りた。



「アンタ ちゃんと考えてるんでしょうね」



ほーら始まった これだから起きるのがイヤだったんだ。

お袋の言葉に答えず テーブルの上にあるパンを口に放り込む。



「高志 ねぇ 何とか言いなさい!  

アンタがハッキリしないと 先方さんにも申し訳ないでしょう」



お袋が”高志”と呼ぶときは機嫌が悪いときだ。



「わかってるよ じゃ 行ってくるから」



邪険に答えて さっと背を向けて部屋を出た。


お袋が俺の背中に向かって 何か言ってるよ

なんで あんなに結論を急ぐんだ?

息子の人生 そんなに簡単に決めていいのかよ





車庫に行くと 親父がゴルフの素振りをしていた。



「ガソリン 満タンにしといたからな」


「ありがとう」


「気をつけていけよ」


「うん」



男同士の会話は簡単でいい 気持ちが少し和らいだ。




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