オルガンの女神

派遣型軍事組織WALTZ(ワルツ)創設以来、最凶の野心家と謳われる男。

名を、サンゴ・イージリス。

硬質な黒の短髪。鷹のように鋭い目。軍服は血で染まり、妖艶に光を溢す二本の刀。

屍(しかばね)の頂きで腰を下ろす様は、凶気と言わざるを得ない。

戦地に残る無数の刀から、男は“星斬り"と呼ばれた。


「じゃあまた」

『ああ。“オルガンの女神"の奴等によろしく言っといてくれ』

「ハルに、だろ」

『はっ、お前が羨ましいよベック』


話を終え、受話器を置くベック。

公衆電話をでると、先程の少年がじっとこちらを覗いていた。

よく見ると少年の肌や服は油で汚れ、その目からは生気を感じない。

孤児だろうか…───。


「ここまで案内してあげたんだ。靴を磨かせてよ。50$でいい」


そう言ってボロ布とワックスを見せる少年。

ベックは膝を曲げ、少年の目線にあわせてやる。


「悪いな。いま手持ちがないんだ」


俯く少年。

するとベックは胸元から一枚の紙とペンを取り出すと、裏面に何やら書き始めた。

それを少年に渡す。

“オルガンの女神"…───?


「そこに俺はいる。来なきゃただの貧乏くじだ」


そう言うと、ベックはその場を去った。

少年は俯いたまま、何気なくその紙の裏を見る。


「え…」


少年が目にした物。それは0が何個も並ぶ、100万$(シル)の小切手。

すぐに辺りを見渡すが、そこにはもう男の姿はない。

男はまた、刺激を求め依頼を待つ…───。



       to be contine...

     ▼『Hungry blue』


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