「きゃっ!」


 鼻の頭をペロリと舐められ、クルミは悲鳴と共に目を覚ました。

 目の前ではご機嫌な様子の黒い獣が、グルグルとのどを鳴らしている。
 目が合った獣は、もう一度ペロリと今度はクルミの口元を舐めた。

 ゆうべ遅く、屋敷のみんなに見送られて、クルミは獣の森に連れて来られた。

 意外にも森の中には石畳の道が整備されていた。
 下草は刈り取られ、木々の間には所々に石造りの小さな家もある。

 ジンがいつか話してくれたように、家を建てて住んでいる獣もいるようだ。
 灯りが点いている家もあった。

 そしてクルミにはよく見えない、そこかしこの物陰から、いくつもの気配や視線を痛いほど感じた。

 獣の森に侵入した人間が珍しいのか、あるいは獣王が選んだ最高の女に興味があるのか。
 どちらにせよ、ここでのクルミは異質な存在に違いない。

 ジンはクルミを背に乗せたまま、森の奥へ石畳の道を悠々と進んでいく。
 やがて道は森の奥深くで、高くそびえる石造りの壁に突き当たった。

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異世界  ファンタジー  獣人  鬼畜眼鏡  深窓の令嬢  もふもふ 

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