ビロードの口づけ 獣の森編

 (3)



 目覚めると隣には黒い獣が丸くなっていた。

 ジンは眠る時、獣の姿に戻る。
 他の獣たちも、よほどの事がない限りそうだという。
 くつろぐ時には本来の姿の方が落ち着くのだろう。

 城内は人型着衣が基本なので、公務中のジンは人型になっている。
 けれどクルミと一緒の時は、ほとんど獣の姿だ。

 それほど気を許してくれているというのは嬉しい。
 なにしろ獣姿のジンは甘えん坊でかわいいのだ。
 ずっと寄り添って、抱きしめて、なめらかな毛並みを撫でていたいと思うほどに。

 なのにどうして、夜のあの時には必ず人型になるのだろう。

 クルミが人だから合わせているのだろうか。
 それとも獣姿のジンと交わる事をクルミが嫌悪するとでも思っているのだろうか。

 冗談で「獣の方がいいなら、そうしてやる」と言われた事はあるが、実際に獣姿になったことはない。

 少し気になっていたが、尋ねるのはちょっとためらわれた。

 今朝のジンはすっかり熟睡しているようだ。
 クルミが起きている事に気付いていないらしい。

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