ビロードの口づけ 獣の森編


 そうしている内にクルミの中にいるジンが、再び存在感を増してきた。
 ジンは身体を起こし、一旦クルミから離れた。

 繋がりがほどける瞬間は、いつもなんとなく寂しい。
 それが顔に出ていたのか、ジンのおもしろそうな声が降ってきた。


「大分オレの導くままに感じるようになってきたな。そんな顔をしなくてもまだ終わりじゃない。覚悟しろと言っておいただろう?」


 はっきりとは見えないが、暗闇の中でジンが意地悪な笑みを浮かべているのがわかる。
 自分だけはっきりと見えているのはズルイといつも思う。
 けれどはっきりと見えていたら、とんでもなく恥ずかしい気がする。

 離れたところから、あまり見つめられるのは恥ずかしい。
 温もりが恋しくなってクルミは手を伸ばした。

 するとその手首を掴まれ、身体をうつぶせにされた。
 背中に覆い被さったジンが、髪をよけてうなじに口づける。
 ピクリと身体が少しのけぞった。
 その隙を突いて、ベッドと身体の間にジンの両手が滑り込んだ。

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